香川県議会は2020年4月1日施行予定の「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」の素案が2020年1月10日に発せられました。
条例に対しネット上では数多くの物議を醸しています。
この記事では条例制定において期待される効果、子どもに与える影響等を考察していきます。
その結論として私はこの条例に「反対」である事をお話しします。
ネット・ゲーム依存症対策条例の詳細
まずはこの条例の内容を理解して頂くため詳細を述べていきます。
分かりやすく言うと「ゲームは1日1時間」という家庭によっては定められていたであろう決まりを県全体で執り行うというものです。
- 高校生以下の子どもが対象
- 平日60分制限
- 休日90分制限
- 中学生以下は21時以降ゲーム禁止
- 高校生は22時以降ゲーム禁止
- 罰則は無し
- 保護者、学校へは「責務」として明記
罰則はありませんが、保護者や学校に対して義務を課するということです。
実はこのような制限はお隣の中国では既に施行されています。
期待される効果
議会側はこの条例に対し「ゲーム依存症を防止する」という期待を持っています。
生活習慣改善や外で遊ぶ時間を多く設ける意図もあると考えられます。ネットも制限されるため、現代の中高生ならほぼ所持しているスマホも一時的に使用不可にすると予想できます。
具体的な取り組み方法を考察
現在条例の具体的な取り組み方法について明示されていませんが、おそらくこうするのではないかという予想を立ててみようと思います。
比較的に再現性が高いという意味では以下の取り組みが考えられます。
- 親による管理
- 遠隔的な管理
- 強制的なシャットダウン
- 子ども自身が記録をつける
親による管理
これは親から「ゲームは1日1時間!」と言われる事もそれにあたりますが、より具体的な方法をとる可能性が考えられます。
たとえばスマホの機能を制限してしまうとかですね。
普段は電話とメールといった連絡用のアプリしか使えないようにするなどです。
ゲームをする時だけ親にお願いして定められた制限時間を消費する、というようなことになるかと。
ただしLINE等連絡にも遊びにも使えてしまうアプリの管理は難しいと思われます。
親自身がアプリについて十分な知識を持つ必要が出てきます。
遠隔的な管理
子どものスマホの使用状況がわかるアプリ等を利用して遠隔的に管理する方法です。
これは例えば任天堂が発売した人気ゲーム機switchには「みまもり設定」という機能があり、親が子どものプレイ時間等を管理できます。
時間が超過すると親に連絡がいき任意でゲームを終了させられます。
さらに「みまもり設定」解除パスワードを間違えると親側に通知が行ってバレる仕組みになってます。
このような機能を持つアプリの導入が義務化される事も考えられます。
取り組みの中では最も現実的かもしれませんね。
強制的なシャットダウン
遠隔管理とは別に日中ゲームで遊べるプレイ時間を定めておき、その制限時間を使いきったら強制的にゲームアプリが終了するというものです。
ただし
「ゲームアプリかどうかを判定するにはどうしたらいいのか?」
「放置ゲームはプレイ時間に入るのか?」
といった問題が出てくるのは確かかと。
後者はおそらくプレイ時間に含まれると思います。
因みに放置ゲームというのはアプリを開いていた時間に対応してキャラが成長したり武器が強くなっていくタイプのゲームです。
ある意味で放置ゲームは今回の条例が最大の天敵になります。
子ども自身が記録を付ける
子どもが自ら表などに日ごとのプレイ時間を記録していく方法です。
ただしこれだけでは不確実性が高く誤魔化しもきくと思われるため、前に述べてきた方法と併用する必要があります。
遠隔的な管理+子ども自身の記録を導入し照合する事で確実性が増すと期待できます。
条例の問題点
今一度言いますが私はこの条例に「反対」です。
なのでここからはこの条例の問題点についてお話します。
ある意味この記事の本題です。
私が提起する問題点は以下のようになっています。
制限時間に怯える日々になる可能性
今回の条例では「ゲーム時間を制限する事によりゲーム依存症を防止」する事を目的としています。
しかし現代においてこれだけで子どもがゲームに依存しなくなるでしょうか?
ゲーム時間を制限してしまえば制限時間内に如何に効率的にゲームをするか、もしくはどうにかしてバレずにゲームするかを考えると思います。
どちらにせよ気持ちよく、楽しくゲームを出来る環境ではなくなります。
日々明確な制限時間に怯えながらプレイする子どもがどんな気持ちか考える必要があります。
ゲームをしない分勉強するわけではない
条例によりゲームをしなくなった分勉強に時間を回せる…という理想論が飛び交ってもいます。
そう考える子もいると思いますが、おそらく大半はそうはならないでしょう。
理由は元より遊びに割いていた時間であるため、いきなり勉強にシフトするというのは至難の業であるからです。
ゲームをしなくなった分外で遊ぶ子は確かに増えるかもしれません。
ただしそれまで当たり前だった環境が激変するという事、まだ13~18歳の子どもが急な対応をするのがどれだけ大変かを知らない事も明らかです。
友好関係の悪化
スマホで連絡先交換、スマホで一緒にゲーム、スマホで記念写真…もう既にスマホは体の一部と言っても過言ではありません。
これは依存というよりも現代における必須レベルの道具と化している事を言っています。
そんな便利な道具は友好関係にも大きく影響しているということです。
これを急に取り上げてしまったら一つのコミュニケーションツールが失われる事になります。
ネット、スマホがゲームだけのツールでは無いという事は懸念すべき部分と考えます。
大人になった時の「自制」への影響
子どもの頃から受けていた抑圧が解けた大人は欲求を一気に解放させようとします。
しかしそのような大人は自分をコントロールできない事が多々あります。
中高生で覚えておくべきだった自制、自律ができないまま大人になるからです。
自制や自律はゲームやネットだけで培われるものではない!
と思う方もいることでしょう。
その通りです。しかしゲーム、ネットを使う時間を自ら決める事が自我をコントロールするための大切な役割であることは強く主張します。
ゲームをまだやっていたい…でも宿題があるからここまでにしよう!
はっきり言ってこれが出来るのは中高生の時だけです。
自制のチャンスを潰すような真似をするべきではありません。
抑圧によるストレス
当然使えていたものに突然制限をかけられると慢性的なストレスが発生します。
肝心なのは「ゲームを許されている時間でもストレスを感じる」事です。
あと10分で電源が落とされる…あと3分でボスを倒してセーブしないと強制終了させられてしまう…子どもにとって恐怖そのものです。
楽しみを失った子どもはどこかにストレスを発散しようとします。
それは抑制した親に向けてかもしれませんし、学校の友達に向けてかもしれません。
それは暴力かもしれませんし、勉強をしない、不登校に繋がる可能性もあります。
大切なのは子どもの趣味を理解した上で無理のない制限をかける事です。
まとめ:子どもに寄り添った考えを
以上がネット・ゲーム依存症対策条例について私が思う事でした。
最後にもう一度言っておきます。私はこの条例に「反対」です。
とにかくこのままでは子どもへの配慮が足りなさすぎると私は考えます。
ルールだから…という流れが横行しないことを願うばかりです。
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